皮膚科

かゆみを伴う疾患

アトピー性皮膚炎

 アトピー性皮膚炎は乳幼児から成人まであらゆる年齢層で罹患しうる疾患ですが、最近は増加傾向にあると言われています。実際に診療していると、成人型アトピー性皮膚炎の増加したと思いますし、特に難治性の方が多くなったと痛感しています。
 病因は今のところ明らかではありません。ひとつの原因で説明することが困難でアトピー性皮膚炎の病因は多面的であると言われています。体質(アレルギー反応?や皮膚のバリアー機能の障害)だけでなく食生活、住環境や対人関係など現代生活そのもの(ストレス)と密接に関係していると考えられます。また人によってアレルギー的な側面が強く出る人もいれば、ストレスの側面が強く出る人もいるため画一的な治療では奏効しにくい傾向があります。したがって、治療においても日常生活をもう一度見直してみることも必要となります。
 経過中にはさまざまなことで症状が増悪したようにみえる場合があります。それには皮膚炎自体が悪化した場合、感染症を併発した場合、薬の副作用(接触性皮膚炎、ステロイド皮膚症)などがあり、その都度増悪因子や治療法を評価し直す柔軟性が必要です。
そう痒感があり慢性反復性の経過をとることが特徴です。皮疹は左右対称性であり、顔面、頸部、肘窩、膝窩等に強い症状が現れます。年齢や増悪、寛解の時期によって異なりますが、年とともに皮膚は粗造になり苔癬化(皮膚が分厚く、硬くなること)した病変もみられるようになり、色素沈着も伴ったりしますが、これはステロイドの副作用ではなく、炎症 が長期間続くことで出現します。このような特徴からある程度個人でも診断は可能ですが 、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、日光皮膚炎や疥癬など、他に除外すべき皮膚疾患がある ため最終的には皮膚科医を受診されることをおすすめします。
 食生活や住環境等の全般的な改善をはかりながら、原因と考えられるのもがあればできるだけ排除するようにします。しかしながら原因を特定できない場合が多く対症療法が中心になります。
 一般的な食生活の注意点としては、偏食を避け、動物性脂肪、糖分、アルコールの摂取を控え、古い食物油、インスタント食品などの加工食品をできだけ摂取しないようにします。逆に魚貝類やミネラル、ビタミン類を含む食物を多く摂取するようにします
。  スキンケアも重要です。最近、アトピー性皮膚炎はアレルギー反応だけでなく、皮膚のバリアー機能の障害が関与しているといわれています。これは酵素系の異常でセラミドという脂質が不足するために起こるとされています。セラミドが不足すると皮膚は乾燥し、いわゆるドライスキンの状態となり外からの刺激を受けやすくなり、皮膚炎が起こりやすくなると考えられています。したがって、このドライスキンを改善することが重要になります。
 スキンケアの基本は清潔にすることと乾燥を防ぐことです。汗やあかやほこりはできるだけ早く洗い流すようにします。最近の研究ではアトピー性皮膚炎患者では自己の汗に対して過敏になっている事が証明されており、汗が夏場のアトピー性皮膚炎の症状の増悪因子として働いているのではないかといわれています。汗に関しては、汗をかいたのちには入浴を行い、入浴直後、皮膚が乾燥する前に保湿作用のある外用剤を塗布することをすすめています。

1)原因に対する治療

 食物やダニ、カビ、花粉等に対するアレルギーが考えられています。
 食物アレルギーで除去食療法の対象となるのはほとんどが乳幼児です。血液検査の結果だけで食物アレルギーがあると判断しないようにしてください。食物アレルギーがあると判断するには、可能性のある食物を2週間は除去し症状が軽快したかどうかを観察し、軽快した場合、再度その食物を摂取して症状が増悪したかどうかを確認します。これで増悪が確認できればその食物にアレルギーがあると考えてもいいでしょう。
 しかしこれらの食物アレルギーも高年齢になるほど軽快します。したがって通常3歳以降では除去食療法の効果は低くなり、特定の食物の制限より全般的な食生活の改善の方が重要です。全般的な食生活の改善とは先ほど述べたような偏食を避け、動物性脂肪、糖分、アルコールの摂取を控え、古い食物油、インスタント食品などの加工食品をできだけ摂取せず、逆に魚貝類やミネラル、ビタミン類を含む食物を多く摂取するようなことです。
 血液検査ではダニ対するIgE抗体は高率に陽性です。これも食物アレルギーと同様で血液検査で陽性だからといって、必ずしもダニが原因とは言えません。しかし、ダニ対策をして症状が軽快するケースもあり、検査で陽性とでれば一応、ダニ対策を奨めています。
 床はフローリングが良く、ダニ殺傷能力のある掃除機でよく掃除し、空気を入れ換えます。また、ダニ抗原は寝具にも多く、接触する時間も長いため、寝具のダニ対策が重要です。防ダニ加工のカバーやふとん乾燥機等を使用することもひとつの方法です。

2)対症療法

 全身的な対症療法として現在、主として行われているのは痒みやアレルギー反応を抑えるため、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服です。
局所的な対症療法としては、ステロイドホルモン剤および免疫抑制剤の外用があります。ステロイド外用剤には抗炎症作用の強さにより5段階のランクがあり、剤型にも軟膏、クリーム、ロション、テープがあります。また、体の部位や皮膚の状態によって吸収率が異なります。ステロイドを外用する際はこれらを使い分けなければなりません。ステロイドに対して恐怖感のある人、ステロイドによる副作用のでた人、成人で顔面病変の著明な人には免疫抑制剤であるプロトピックの外用をすすめています。ただプロトピックは外用した後に、ひりひり感やかゆみを訴える方が多いので十分な説明をしてから使用していただきます。

じんましん

 かゆみを伴い、赤く蚊にかまれたようにはれたり、地図状になったりします。数時間以内に消退しますが、繰り返し起こることがあります。1~2週間以内に治まる急性型と1ヵ月以上続く慢性型があります。原因としては温熱や寒冷刺激、圧迫などの物理的刺激、感染病巣がある場合や、食事や薬剤による場合や心因性などさまざまです。慢性型では原因の究明が困難なことが多く、原因が明らかにならなければ軽快するまで対症的に薬を内服することになります。
ただ最近では防腐剤や着色料などの食品に入っているもので蕁麻疹が悪化する場合や自己免疫性蕁麻疹という概念が分かってきており以前にくらべると原因が明らかになることも増えてきたような感があります。

接触性皮膚炎

 接触原となりやすいものは、化粧品、草花、洗髪料、ゴム、金属、革製品など多くあります。接触性皮膚炎を疑えば原因究明のため、パッチテストを行うことをすすめています。

脂漏性皮膚炎

 皮脂の分泌の多い頭部、顔面などに鱗屑を伴った紅斑ができます。

貨幣状湿疹

 円形で湿潤した紅斑で、下腿によくできます。多発することも多く、上肢や躯幹にも拡がります。細菌感染が発症に関係があると推測されていますが、必ずしも原因は明かではありません。また金属アレルギーを合併している場合もみられます。

皮脂欠乏性皮膚炎

 中高年齢者の下肢に好発します。冬季に症状が著明になり、下肢の皮膚が乾燥し浅い亀裂が生じます。保湿剤とステロイド外用も併用した治療を行います。乾皮症なら保湿剤のみで対応します。

足白癬、爪白癬

 足底や趾間に水疱、糜燗や落屑を伴います。汗疱や掌蹠膿疱症との鑑別が必要です。また、角化型といって角質増殖が著明で亀裂を伴ってくるようなものもあります。足白癬があるとそこから細菌感染を起こすこともあり、足全体が赤く腫れ、発熱、疼痛を伴う蜂窩織炎になることもあります。
また、爪白癬は爪甲の白濁、肥厚や変形伴い、外用剤だけでは治癒しにくい疾患です。抗真菌剤の内服を併用することもあります。内服薬を使用すると半年から1年で完治する事が期待できます。特に糖尿病の方は蜂窩織炎などの感染症を契機に壊疽になることがありますので、水虫のケアも重要です。

疥癬

 指間、外陰部や腋窩など皮膚の柔らかいところに好発する疾患です。かゆみが極めて強いのが特徴で、通常の湿疹と誤診してステロイドなどの外用剤を外用する事で症状が悪化します。
診断は疥癬虫(ヒゼンダニ)や虫卵を顕微鏡下でみつけることです。

痛みを伴う皮膚病

単純疱疹(単純ヘルペス)

 口唇周囲にできるものと陰部にできるものでものがあります。小さい水疱が多発し、痛みを伴うことがあります。治療には抗ウイルス剤の内服や外用を行いますが、この薬はウイルスが増殖するのを抑えるだけで、ウイルスを除去することはできませんのでしばしば再発します。

帯状疱疹

 水痘(みずぼうそう)と同じウイルスが原因でそのウイルスが神経節に潜伏感染しており、加齢、疲労などで自身の免疫機能が低下した時に再活性化され出現する疾患です。高齢者、免疫不全患者などでは再発することが多いです。

腫瘍(できもの)

 皮膚腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があります。外見でもある程度は鑑別ができますが、確定診断には皮膚生検が必要です。皮膚生検は局所麻酔を行い、腫瘍の一部を取る場合と小さい腫瘍であれば腫瘍そのものを切除してしまう場合があります。切除した標本は病理検査に提出して確定診断を行います。

良性腫瘍
粉瘤

 最もポピュラーな皮膚腫瘤です。皮膚が皮内で嚢腫(袋のようなの)を作り、その中に角質(垢のようなもの)がたまって、徐々に大きくなります。

脂肪腫

 代表的な皮下腫瘤です。通常は脂肪織にありますが、筋層や真皮内にみられることもあります。触れると柔らかく、皮膚面がやや隆起することもありますが、色調の変化などはみられません。大きさは様々ですが、徐々に大きくなります。
良性腫瘍ですので放置しておいてもかまいませんが、皮下腫瘤は外から見たり、触っただけでは診断が困難なことも多く、最終的には切除して病理組織学的に検査しなければ診断できません。脂肪腫でも同様で他の腫瘍と鑑別が必要な時には切除します。

色素性母斑

 神経由来の細胞が増えたもので、比較的小さく盛り上がったものを「ほくろ」といい、大きく扁平なものを「あざ」と呼んでいます。「ほくろ」は通常、黒褐色~褐色ですが、正常皮膚色に近いこともあります。よく「ほくろ」から皮膚癌になると心配される方がおられますが、巨大な色素性母斑を除いて、悪性化する頻度は正常の皮膚と変わりません。
治療を希望される場合は切除や炭酸ガスレーザー照射を行います。
ただ足底や手掌にできた黒色のできものは一見ほくろにみえて悪性黒色腫という悪性腫瘍の可能性が日本人では高いので、注意が必要です。

イボ

 尖圭コンジローム 外陰部に多発する乳頭状の腫瘍で、ベセルナ外用や気焼的、CO2レーザーで切除します。

うつるイボ-ウイルス性のイボ
尋常性疣贅 手足に見られる普通のイボ 冷凍凝固療法
扁平疣贅 顔や頚に多発する淡褐色で扁平なイボ 内服療法または経過観察
尖圭コンジローム 外陰部に多発する乳頭状の腫瘍 電気焼灼
伝染性軟属腫 いわゆる「みずいぼ」 摘出または経過観察
うつらないイボ-老人性疣贅
褐色から黒色調で表面はイボ状のものが多い。大きさは様々で単発のものから多発するものもあり、種々の臨床像を示します。悪性腫瘍との鑑別を要することがあり、その場合は切除します。その他の場合は放置してもかまいませんが、美容的な観点からは炭酸ガスレーザーにて治療を行います。
悪性腫瘍

 皮膚癌としては、有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫、前癌病変として「日光角化症などがあります。
 有棘細胞癌は悪性度の高い癌の一つです。「やけど」や「けが」のあとに発生することもあります。頭・顔・手足に潰瘍を伴った腫瘤ができ、急激に大きくなります。
 基底細胞癌は比較的良性の癌です。にきび様あるいは小さなほくろ様の病変から始まり、長い時間をかけて徐々に大きくなります。顔に好発し、色は黒色調のものが多く、潰瘍化することもあります。
 悪性黒色腫は俗に「ほくろの癌」ともいわれる悪性度の最も高い癌の一つです。日本人の場合、他の皮膚癌に比べて、光に当たる部位よりも手のひら・足の裏によくできます。多くは、黒色の腫瘤で短期間に大きくなり、出血したり色がしみ出たようにみえます。
 日光角化症は前癌病変ですが、顔や手足などの光のよく当たる場所にできる、小さいいぼ状の腫瘤で、しばしばそのまわりの皮膚が赤くなっています。進行すると前述の有棘細胞癌になることがあります。
 治療は早期に発見し、生検で確定診断し、ベセルナ外用や、早期に切除するという手術治療が 原則です。

褥瘡(床ずれ)

 これからの高齢化社会では病院だけでなく、施設や在宅でも褥瘡を経験する機会が増加すると考えられます。
 医療従事者はもちろんですが、そうでない方もある程度の知識をもって接しなければならないこともあるかもしれません。そのような時、すこしでもお役に立てれば幸いです。
 褥瘡は未然に予防することが、最も重要なことです。しかし一般家庭などでは十分な知識がなかったり、たとえ知識があってもそこまで手厚い介護ができずに褥瘡を作ってしまうことがしばしばあります。また、看護力のある施設や病院でも残念ながら褥瘡を作ってしまうことがあります。
褥瘡の予防を心がけるとともに、治療のついての知識を修得し適切に対応できるようにしたいものです。 当院では、褥瘡の予防法やもし傷ができてしまった後でもその処置について詳しく説明を行い、実際に実践を行い家族の方や本人にも褥瘡について理解してもらうように心掛けています。