主な診療内容

循環器内科

当クリニックでは循環器の分野においては高血圧症を中心として、個々の病態にあった適切な診療を行っております。さらに、心不全、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症などの静脈性疾患についても、循環器専門医が診療を行っており、必要時には心臓超音波による心臓の検査を行っておりますので、心配な方は当クリニックを受診しご相談ください。

以下に、各疾患の概要および治療方法を説明します。

高血圧症

一般に、収縮期血圧120mmHg、拡張期80mmHg以上の時、血圧が高いといいます。診察室血圧が140/90を超えたら高血圧と診断します。ただし、年齢によって違います。また、一度血圧を測って高かったからといって、すぐ高血圧症があるというわけではありません。血圧はいろんな原因によって変動します。十分に安静をとった状態で何度か測り直す必要があります。さらに何日か続けて測ることも大切です。それでもやはり血圧が高ければ高血圧症ということになりますが、高血圧はいろいろな病気、二次性高血圧症が起こりうるため、その原因についても調べる必要があります。

そもそも血圧とは、心臓から全身に送り出された血液が血管の壁を押す時の圧力のことで、上の血圧(収縮期血圧)は、心臓が収縮して血管に最も強い圧力がかかっている状態であり、下の血圧(拡張期血圧)は、心臓が拡張している時の血管への圧力を指しています。高血圧症自体は何らかの自覚症状を伴うことは少ないのですが、虚血性心疾患、脳卒中、腎不全などの発病の原因となるために臨床的には重大な状態です。また、肥満、脂質異常症、糖尿病との共存は、死にいたる虚血性心疾患を発症する確率が高くなるため「死の四重奏」などと称されたこともある非常に危険な状態であり、現在はメタボリックシンドロームと呼ばれています。

成人における診察室血圧値の分類

分 類 収縮期血圧(mmHg)        拡張期血圧(mmHg)
正常血圧 <120 かつ <80
正常高値血圧 120~129 または <80
高値血圧 130~139 または 80~89
Ⅰ度高血圧 140~159 または 90~99
Ⅱ度高血圧 160~179 または 100~109
Ⅲ度高血圧 ≧180 かつ ≧110

高血圧だけでなく、動脈硬化になりやすい他の危険因子(男性、喫煙、脂質代謝異常、肥満、糖尿病、家族歴など)を合併すると、動脈硬化に起因する疾患の発症率は飛躍的に増大することが明らかになっています。
血圧は、病気の初期には日々の変動が大きいのですが、後には固定してきます。異常に高い血圧が長年続くと、まず心臓の負担が大きくなり、その代償機転として心肥大、心拡大が生じてきます。
また、高血圧のため末梢の動脈には動脈硬化が生じてきます。この動脈硬化が心臓を栄養している血管(冠動脈)や脳、腎臓の血管などにおこれば、それぞれ心臓発作、脳卒中、腎不全を起こしてきます。

治療としては、食事・運動療法と薬物療法があります。まずは食事・運動も含め、今までの生活習慣の是正が必要です。

主な是正すべき点

  1. 食塩制限7g/日以下
  2. 適正体重の維持
  3. 適度なアルコール
  4. コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える
  5. 適度な運動
  6. 禁煙

次に、薬物療法としては以下に示す種々の降圧剤があります。

降圧剤

カルシウム拮抗剤:
動脈拡張作用があり、降圧効果が比較的強力であり、広く用いられています。代謝面への影響が少ない。副作用は、頭痛、顔面紅潮、動悸などがあります。
ACE阻害薬:
アンギオテンシン、アルドステロンというホルモンの生成を抑制することで、降圧作用を示します。この薬は降圧作用だけでなく、インスリン抵抗性を改善したり、腎臓や脳にも臓器保護作用を併せ持っており、さらには、慢性心不全患者の生命予後を改善させうることから、特にそのような重症な方には必須の薬となっています。副作用としては、空咳、高カリウム血症、味覚異常、血管性浮腫などがあります。
ARB:
アンギオテンシン受容体拮抗薬で、ACE阻害薬とほぼ同等の効果が期待される新しいタイプの薬です。この降圧剤は、ACE阻害薬でまれに認められる空咳がないのが特徴の一つです。
β遮断薬:
交感神経緊張の影響を少なくし心臓への負担を軽くして心臓病の発生を予防するといわれています。ただし、肺疾患のある人や、高齢者、末梢動脈硬化の強い人にはすすめられません。
降圧利尿薬:
古くから使用されています。体内の余分な塩分を尿中へ排泄することで、循環血液量を適正に保ち、血圧を下げます。むくみを伴っている場合などには特に効果的です。副作用としては、電解質異常、糖尿病や脂質異常症の悪化、脱水などがあります。

これらの降圧剤を、必要ならば併用して用います。ただし、どの薬にもそれぞれ副作用はあります。個人差がありますので、必ず診察を受け、よく検査してもらって十分医師の監督のもとに用いることが重要です。

虚血性心疾患

狭心症はどのような病気か?

働きものの心臓に酸素と栄養を送っているのが心臓を包み込むように取り巻いている冠状動脈です。この冠状動脈にコレステロールなどの脂肪が沈着すると血管が肥厚して動脈硬化がおき、血管が狭くなり、血液の流れが悪くなります。このような状態になると心臓の筋肉へ必要な酸素や栄養が行き渡りにくくなり急に激しい運動をしたり、強いストレスにあうと心臓の筋肉は一時的に血液不足になり、胸痛が生じます。また、動脈硬化に関係なく、冠状動脈が何かの原因で局所的に収縮して内腔が狭くなると、心筋への血流が悪くなり、狭心発作をおこす場合があります。これを冠状動脈のれん縮(スパズム)といいます。

狭心症の胸痛はどのような症状か?

胸痛といわれているものは、必ずしも痛みではなく、締め付けられるような感じであったり、圧迫感だったり、肩こりのような症状だったり、腕や首へ放散するような痛みだったり、様々です。しかしながら、狭心症の診断においてはこの症状が最も重要な決め手になりますので、自分の言葉で上手に表現することが大切です。狭心症はどのような状態で胸痛が起こるのかが診断のポイントとなります。

労作性狭心症とは?

急いで歩く、駅の階段を昇る、坂道を登るなどの動作で胸の中央部、上腹部あるいは背中が圧迫されるとか、締め付けられるような症状をきたし、このような労作を停止すると自然に症状が消失するものを労作性狭心症と呼びます。これは、安静にしている時には心筋への血液供給は不足しないのですが、労作に際して心筋の酸素需要が増す時、血管の狭窄があると十分な血液が送れなくなるために、症状が現れます。これを心筋虚血と呼びます。これらの症状は通常、胸痛として表現されていますが、実際には痛みとは限らず、多くの場合、圧迫感や絞やく感などの症状で、部位がはっきりしないことも多々あります。

安静時狭心症とは?

狭心症は労作と無関係にも生じ、安静時に起こるものを総称して安静時狭心症と呼んでいます。これら安静時に起こるものでは、時間による特徴がみられる場合があります。狭心症は早朝、すなわち明け方に起こることが比較的多いのですが、真夜中に起こる場合もあります。今日では、その有力な原因に先に延べた冠状動脈のれん縮(スパズム)が考えられています。夜間から早朝に血管の緊張が高まっていることが大きく関わっているようです。

狭心症の症状が悪化したら?

安定した状態から、狭心症発作の頻度、強さ、持続時間の程度が増悪し、しかもニトログリセリンや硝酸イソソルビドの舌下服用が効きにくいといった状態を不安定狭心症と呼びます。これは、心筋梗塞の前触れとして非常に重篤な状態であり、このときにはすぐにCCU(冠疾患集中治療室)へ入って適切な監視の下に治療を受ける必要があります。したがって、このような狭心症の症状が現れた場合には、可及的早期に医師に相談する必要があります。

狭心症の治療は?

狭心症の発作を鎮静したり、予防的に服用する薬を抗狭心症薬といいます。硝酸薬、カルシウム拮抗薬やβ遮断薬などがあります。

抗狭心症薬

硝酸薬:
末梢の静脈を拡張して心臓へ戻ってくる血液量を減らすとともに、末梢の動脈を拡張して血圧を下げるので心臓の負担を軽くします。また、冠状動脈を拡張して冠状動脈のれん縮を緩解します。
狭心症の発作中に舌下服用するかまたはスプレーを口腔内に噴霧すると1~2分で発作が消失します。また、作用時間の長い経口徐放剤、テープ剤、軟膏剤や静注剤などが発作予防に用いられます。
カルシウム拮抗剤:冠状動脈を拡張する薬剤で、冠状動脈のれん縮を抑制し、血圧を下げ心臓の負担を少なくします。
β遮断薬:
交感神経の刺激効果を抑制して、心臓の拍動が強くかつ早くうつのを防ぎ、血圧を下げて心筋の酸素需要を節約します。

以上の薬物療法以外には、カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)やバイパス手術があります。

狭心症の危険因子は?

高血圧、脂質異常症、喫煙、糖尿病などがあげられます。

心筋梗塞

冠状動脈の血流不足の状態が強く、30分以上も続くと、心臓の壁の一部の細胞が死んでしまいます。この病気を心筋梗塞といい、この病気にかかって数週間を急性心筋梗塞といい、非常に死亡率の高い病気です。この期間を過ぎると、死んだ部分は傷跡になって残り、心臓の収縮の状態は元通りではありませんが、比較的安定した状態になります。

脂質異常症

脂質異常症とは、血液中の脂質成分が過剰になった状態をいいます。脂質の主なものは、コレステロールと中性脂肪です。コレステロールには、悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールと善玉コレステロールがあります。前者は、血管壁に沈着して動脈硬化を促進しますので悪玉と呼ばれており、後者は逆に動脈硬化を抑制する働きをするため善玉と呼ばれています。脂質異常症は自覚症状がほとんどありません。脂質異常症の診断は血液中のコレステロールや中性脂肪が正常値を超えて高い時につけられます。一般に年齢が上がると高くなりますが、特に女性は閉経後に増えてきます。LDLコレステロールの正常上限は140mg/dl、HDLコレステロールの正常下限は40mg/dl中性脂肪の正常上限は150mg/dlで、 non HDLコレステロールの正常上限は170mg/dlです。

治療法は、食事療法、運動療法、薬物療法があります。まず、食事療法としてはカロリー制限、アルコール制限が必須です。その上で、特にコレステロールが高い人は、一日のコレステロール摂取量を300mg以下に抑えます。卵黄1個に約250mgも含まれていますので、要注意です。また、中性脂肪が特に高い人は、アルコール制限やカロリー制限を徹底してください。適度な運動は、エネルギー代謝を活発にするので、中性脂肪を低下させ、善玉のHDLコレステロールを増加させます。毎日無理のない運動を行い、体重の調整をはかることが大切です。食事、運動でもコレステロールや中性脂肪が正常化しない場合には薬物による治療が必要です。コレステロール低下目的には、HMG-coA還元酵素阻害薬(スタチン製薬)が最もよく使用されます。また、動脈硬化を起こすLDLコレステロールの酸化を抑える作用をもつ抗酸化剤としてプロブコール製剤が使用されます。中性脂肪低下目的にはフィブラート系薬剤が最も有効ですが、その他、エイコサペンタエン酸やニコチン酸製剤も使用されます。